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MFA蔓延時代の広告戦略 〜 MFAサイトへの予算流出を防止するために

2025/04/22

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寄稿提供:DoubleVerify Japan 株式会社

MFA(Made For Advertising)サイトの正体

MFAとは何か?

デジタル広告を取り巻く環境は変化し続けており、デジタル広告における透明性の確保と、ブランドとの整合性の必要性はかってないほど高まっている。

2023年から2024年にかけて、米国を中心にデジタルマーケティング界隈で、MFA(Made For Advertising)という言葉を頻繁に耳にするようになった。しかしながら、MFAサイトそのものは、突然世の中に現れたものではなく、以前から存在はしてきたものであるが、MFAというコンセプトによって認識されることで、世の中的に関心が高まってきたものである。

では、一体MFAサイトとはどういうものなのか。一般的なMFAサイトの解釈としては、広告収入を目的とした低品質または価値がないコンテンツで構成されたウェブサイトを指す。こうしたサイトは、しばしばユーザー体験を無視し、広告収入を最大化するために意図的に作られたものが多い。

2023年に、ANA(全米広告主協会)が発表したレポート(ANA Programmatic Media Supply Chain Transparency Report)によると、調査したキャンペーンのうち、21%のインプレッションがMFAサイトに配信されており、広告費の15%がMFAサイトで占められていた。

では、MFAサイトとは、具体的にどういうサイトのことを指すのか。ANA(全米広告主協会)、4A’s (アメリカ広告業協会)、WFA(世界広告主連盟)、ISBA(英国広告主協会)といった主要広告業界団体では、MFAサイトの定義を策定している。

ANAによれば、MFAサイトは、「Made for Arbitrage(アービトラージ)」サイトとも呼ばれている。アービトラージは、金融用語で「裁定取引(サヤ抜き)」と呼ばれ、MFAサイトにおいては広告在庫を安く仕入れ、高く売ることで差益を得ることである。

MFAサイトは通常、センセーショナルな見出し、クリックベイト、挑発的なコンテンツを使用して訪問者を引き付け、ページビューを生成し、その結果としてサイトオーナーに広告収入をもたらす。MFAサイトは通常、低品質なコンテンツを特徴とし、広告収入を最大化するためにポップアップ広告、自動再生動画、または押しつけがましい広告などの戦術を使用することがあり、MFAサイトは一般的にデジタル広告購入者を欺くように設計されている特徴がある。

ANAなどの業界団体では、MFAサイトは通常、以下の5つの特性のいくつかの組み合わせとしている。

1)高い広告対コンテンツ比率
a)通常、インターネット平均の少なくとも2倍、例えばデスクトップではコンテンツに対する広告比率が30%以上

2)広告が頻繁に自動更新される
a)多数のリフレッシュバナー広告
b)自動再生ビデオ広告がサイトに溢れている
c)スライドショーでは、コンテンツにアクセスするために複数のページをクリックしなければならず、複数の広告が表示される

3)有料トラフィックの割合が高い
a)MFAサイトのパブリッシャーは、オーガニックのオーディエンスをほとんど持たないことが多く、その代わりに、ソーシャルネットワーク、コンテンツレコメンドプラットフォーム、さらには評判の良いパブリッシャーのウェブサイトで実行されているクリックベイト広告から誘導された訪問に大きく依存。有料トラフィックの購入は、MFAビジネスの運営における主なコスト要因であり、有料トラフィックの獲得コストをカバーするために、MFAサイトのパブリッシャーは積極的な収益化とアービトラージを行う必要がある。

4)一般的なコンテンツ(編集記事ではなく、テンプレート化されており、低品質なコンテンツ)
a)多くの場合、シンジケート化された記事が多く、日付が古く、独自性のない(使い回しの)記事。

5)通常、デザインが貧弱で、テンプレートを使用したウェブサイトデザイン

 また、業界団体に加えて、大手アドベリフィケーション企業であるDoubleVerify(以下DV)では、MFAを次のように定義している。

DVにおけるMFAコンテンツの分類

〇MFAサイトは、以下の特徴のほとんどまたはすべてを備えている。
〇ページ上のコンテンツに対する広告の割合が高い。また、1回の訪問から最大限の利益を得るために広告が頻繁に更新される。
〇有料トラフィックのソース(ソーシャルメディア広告やネイティブ広告など)に大きく依存しており、オーガニックソースからのトラフィックはほとんどないか、まったくない。
〇ユーザーが同じサイト内で延々とスクロールやクリックを続けるように設計されたコンテンツ。
〇さまざまなウェブサイトに同じコンテンツがそのまま重複して掲載されている場合。
〇DV 基準値に対する広告のビューアブルタイムの比率である広告インテンシティ(注目度、強度)が低い。

そもそも、MFAサイトにおいて誤解が多いものとして、MFAサイトが違法サイトやアドフラウドである広告インプレッション詐欺サイトと同じように認識されていることも多い。しかし、MFAサイトは、業界団体などがIVT(無効トラフィック)やアドフラウドを特定するための業界水準と必ずしも一致しておらず、目的によっては、MFAサイトは必ずしも悪いものではないという理解が必要である。

広告主が理解しておくべきポイントは以下の通りである。

MFAサイトは本来詐欺的なものではない。

MFAサイトは、本質的に不正でも無効でもないものの、トラフィックや収益化の手法によってさまざまな属性を示す。アドフラウドなど不正行為に関する業界基準は、主に海外では、IAB、MRC、TAG や、日本においてもJICDAQなどの認証機関によって設定されている。これらの基準は、無効トラフィック(IVT)、ボットトラフィック、クリックフラウド(詐欺)、ドメインスプーフィングをはじめとする(ただしこれらに限定されない)フラウド(不正行為)から広告主、パブリッシャー、クライアントを保護するものある。第三者機関による調査は、必ずしもこれらの業界基準に一致しているとは限らず、すべてのMFAサイトを安全でないと誤った認識を与えてしまう可能性もある。

MFA サイトは、本来、安全でも不適切でもない。

MFAサイトにはさまざまな要素を持っているため、広告主の中には、キャンペーンの目標に合致するため、意図的にMFAに分類されるサイトでメディアを購入する場合もある。通常であれば、広告主は常に、明らかに安全でない広告在庫を回避したいと考える。しかし、これはすべてのMFAサイトに当てはまるわけではなく、MFAサイトに掲載されている広告の多くは、実在する人物によるエンゲージメントを集めることに成功している場合もある。このためマーケティング担当者は、特定のMFAサイトが自社のブランド価値や広告目標に一致しているかどうかを、きめ細かなツールを使って判断することが求められている。

ANAのレポートでも、MFAサイトにおいて、マーケターが設定しているKPIであるCPM*が25%通常よりも低く、動画の視聴完了率も高く、ビューアビリティや、アドフラウドなどのメディア品質基準を満たしている場合もある。広告主は、自社のキャンペーンによって、MFAサイトを含めるかどうかのブランド適合性の基準を持つ必要があると述べている。

*CPMはWeb広告が1,000回表示されるごとにかかる広告費

MFAサイトがデジタル広告業界に与える悪影響

生成AIの登場により、ウェブサイトのコンテンツを簡単に生成することができるようになりMFAサイトの急速な増加につながっている。前述したように、MFAサイトは、クリックベイトや自動動画再生など、いろいろな手法を使うことで、デジタルマーケティング部門が設定しているクリック率やビューアビリティ、動画視聴完了率などのKPIに対してはパフォーマンスが良い結果を示す場合も多い。しかしながら、広告主などのバイイングの側から見た場合、低品質なMFAサイトに広告が掲載されることで、本来ターゲットとした消費者に広告メッセージが届かないため、いくらKPIを達成していても、結果として広告費を無駄に消費することになる。

また、低品質なMFAサイトに広告投資することは、広告主にとって投資の無駄が発生するだけでなく、ユーザーに不信感を抱かせることが多く、広告への関心を低下させ、最終的にはブランド毀損を引き起こす。

さらに、消費者への影響として、消費者が広告に対して信頼を置けなくなるリスクを増大させ、これにより、消費者は広告に対して無関心になり、広告の効果が一層薄れる可能性がある。MFAサイトはオンライン体験を低下させる一因であり、インターネットの「改悪化」とも呼ばれる現象である。これらのサイトは、ユーザーの満足度よりも広告収入を優先し、イライラさせるナビゲーション、圧倒的な広告のロード(読み込み)、反復的で低品質なコンテンツにつながり、消費者が利用できる情報の質を低下させるだけでなく、広告疲れを引き起こし、広告のエコシステム全体に打撃を与える。

MFAサイトは、合法的なパブリッシャーに対しても悪影響を与える。MFAサイトは、良質な視聴者と広告費の両方を質の高いコンテンツから遠ざけてしまう。MFAサイトの急増は広告出稿の競争を激化させ、パブリッシャーの広告料金の低下を招くことが多くなる。さらに、このような低品質なサイトの存在は、オンライン広告全体に対する信頼を損なう可能性がある。

MFAサイトの問題は、結局、ブランドセーフティとブランドスータビリティ(適合性)の問題であり、デジタル広告に関わる広告主、広告代理店、パブリッシャー、そして最終的には消費者に悪影響を与えるものである。広告主や広告代理店は、デジタル広告が、ブランドにとって安全かつ適合するサイトに掲載されているかどうかをきちんと見極め、守りと攻めのバランスをとることが非常に重要である。

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