寄稿記事


MFAサイトの正体とは?Spider Labs独自調査による解説

2025/04/22

寄稿記事

寄稿提供:株式会社Spider Labs

インターネット上には有益な情報やサービスを提供している多くのウェブサイトが存在します。しかし、そのなかには広告収益のためだけに作成された「MFAサイト」と呼ばれる悪質なウェブサイトもあるため、広告出稿の際には注意が必要です。

そこで、MFAサイトの特徴や識別方法、そしてこれらのサイトから広告主が身を守るための効果的な戦略について詳しく解説します。デジタル時代の広告活用において知っておくべき重要な情報をご紹介しますので、ぜひお役立てください。

MFAとはユーザー体験を犠牲にする危険なサイト

MFA(Made-for-Advertising)サイトは、デジタル広告で収入を得ることだけを目的として設計されたウェブサイトです。これらのサイトは、トレンディングトピックや人気のあるキーワードを多用し、訪問者を引きつけ、大量のページビューの獲得を目標しており、2023年9月にアメリカの広告主団体「ANA」が声明を発表してから徐々に日本でも認知が広まってきています。ここでは、MFAサイトの基本的な概念と、それらの特徴について詳しく解説します。

MFAサイトの特徴

MFAサイトはいくつかの典型的な特徴を持っています。アメリカの広告4団体、ANA、4A’s、WFA、ISBAによって定義されたMFAサイトの特徴は以下の5つです。この特徴が見られた場合、MFAサイトの可能性が高くなります。

 

【MFAサイトのイメージ図】

1.コンテンツに対する高い広告比率

Google AdSenseのガイドラインでは、広告コンテンツがテキストコンテンツを超えないよう推奨されています。​そのため、広告とコンテンツの比率を約30%対70%に保つことが、良好なユーザーエクスペリエンスを維持し、広告収益を最大化する上で適切とされています。しかし、MFAサイトにおいてはデスクトップ上に表示されたページコンテンツに占める広告の割合が30%以上を超える場合があります。ページ上に異常な数の広告が存在し、コンテンツよりも広告が目立つことがあります。

2.広告枠が早いサイクルで自動更新される

・多くの自動更新されるバナー広告
・自動再生されるビデオ広告がサイト上に溢れている
・コンテンツにアクセスするために訪問者に複数のページをクリックさせるスライドショー

ユーザーの視線が自然に集まる場所への大きな広告の配置や、記事の途中に何度も広告を挿入する方法はMFAサイトが使用する定番の手法です。また、ページをスクロールするたびに新しい広告が自動更新されるような設計になっていることもあります。

3.有料トラフィックの割合の高さ

MFAサイトは通常、オーガニックのトラフィックがほとんどなく、代わりにSNSやコンテンツプラットフォーム、そして信頼できるパブリッシャーのウェブサイト上に掲載されるクリックペイド広告(クリックを誘発する広告)からのトラフィックに大きく依存しています。

有料トラフィックの購入がMFAビジネスの主なコストドライバーです。有料トラフィックの獲得コストの採算が取れるように、MFAサイトは積極的な収益化を行います。

4.テンプレート化された低品質のコンテンツや、古く独自性のない再利用された記事

質より量を重視し、SEOを最大限に活用して検索エンジンでの順位を上げるために、キーワードを過剰に盛り込んだ記事を多用します。最近では生成AIを活用してより効率的かつ大量にMFAサイトを量産しているという点も指摘されています。

5.テンプレート化されたデザイン性のないウェブサイト

魅力的なデザインを重視するよりも手間をかけずに作成できるテンプレート化された簡易的なウェブサイトのデザインです。

このように、コンテンツの質を犠牲にして広告の配置と数を増やすことが、MFAサイトの典型的な戦略となっています。MFAサイトは、ユーザーに有益な情報を提供するよりも、ユーザーをページに留めて広告の露出を最大化することを優先しています。自動で検知することは難しいですが、目視でウェブサイトを確認すると違和感があるようなコンテンツ、デザインであることが多いです。

広告配信ネットワーク側でも対策は強化されているものの、メインのドメインは問題ないものにして配下のディレクトリでMFAサイトを大量に生成する方法もあります。

MFAサイトへの広告掲載がもたらすデメリット

MFAサイトへ広告を掲載するメリットは全くありません。大量のインプレッションを低コストで得ることができますが、水増しされた見せかけの数字です。ターゲットとなるユーザーには届かず、企業の広告費が浪費されてしまう可能性が高くなります。また、金銭的なデメリットだけでなく、トラフィックの質やブランドイメージのリスクなどのデメリットも伴います。

MFAサイトへ広告を掲載するデメリット

  • 低品質のトラフィック‍

MFAサイトのトラフィックは、ユーザーの広告に対する関心が低く、広告収益を目的に不正または機械的に誘導された可能性があるため、広告主にとっての実質的な価値が極めて低いとされます。これにより、無効インプレッションや誤クリックが発生しやすく、広告費の不正消化のリスクが高まります。 

  • ブランドイメージのリスク‍

品質の低いサイトやスパム的な要素を持つサイトに広告を掲載することで、ブランドイメージが損なわれる可能性が高くなります。信頼性の低いプラットフォームと見なされることもあるでしょう。

  • ユーザーエンゲージメントの低さ

MFAサイトのユーザーは、サイトのコンテンツに対してあまり関心を示さない傾向があり、結果として広告に対するエンゲージメントも低く、広告のクリック率やコンバージョン率に悪影響を及ぼす可能性があります。

年間7,900万円規模のMFAサイトによる被害を検知

弊社「Spider AF」を用いた調査でもMFAサイトを多数検知しています。41億回以上のクリックを対象に実施した2025年度版のホワイトペーパーでは、年間でおよそ7,900万円以上がMFAサイトへ浪費されていたことが判明。さらなる調査により、MFAサイト上で460万回を超える無効クリックが検出されました。

MFAサイトの疑いのあるウェブサイト例

MFAサイトの一例としてよく挙げられるのは、特定のトレンディングトピックや人気キーワードを集中的に扱うウェブサイトです。これらはしばしば、エンターテインメント、健康、技術といった広範囲にわたるテーマで、内容の薄い記事や情報を大量に生産しています。

例えば、「究極のダイエット食品ベスト10品」や「いますぐ人生を変える方法」など、センセーショナルで具体性に欠けるタイトルが特徴的です。これらの記事はSEOに最適化されており、検索結果で上位に表示されることを目指していますが、内容は表面的であり、広告が多く含まれています。

 

【MFAサイトと疑われるウェブサイト トップ画面】

実際のMFAサイトと疑われるウェブサイトを詳しく見ていきましょう。まず目に飛び込んでくるのが、”50歳を過ぎたら食べないようにしたい人気食品10選”というタイトルです。50歳を過ぎた健康思考の人なら思わずクリックしたくなるような目を引くタイトルの記事です。コンテンツよりも広告の方が目立ち、デスクトップ画面の30%以上を広告が占めています。

 

【MFAサイトと疑われるウェブサイト】

一見するとまともな内容が書かれているかのようにも見えますが、よく読むと信憑性のない、表面的な内容ばかりです。また、文字数が400〜500文字と通常の1/10にも満たず、非常に少量です。”この記事の続きを読む”という次へボタンがあり、すぐに次のページに誘導するのもMFAサイトの特徴の一つです。MFAサイトは広告が表示されるごとに収益が発生するインプレッション課金制。そのためユーザーがページを移動するたびに新たな広告が表示され、収益へ繋がるのです。

スクロールをするとその下にも広告は続き、おすすめ記事も出てきました。「糖尿病のリスクを下げる食べ物16選」「がんのリスクを下げることのできる食べ物20選」など衝撃的なタイトル、無料の写真素材をサムネイルとした記事だけで構成されていて、記事を読まなくとも低品質なコンテンツであることがひと目でわかります。

 

【MFAサイトと疑われるウェブサイト】

どのようにしてMFAサイトを回避すべきか?

一見すると、MFAサイトは広告の即効性や大量のインプレッションを得られる点で魅力的に映るかもしれません。しかしそれらは水増しされた表面的な数値にすぎず、実際にはターゲットに届かず、長期的な視点では企業の資産を無意味な場所に投下していると言えます。健全なビジネスを展開する広告主にとっては、短期的な“見せかけの成果”よりも、トラフィックの質やブランド価値を守ることが重要です。

広告が表示されるウェブサイトの管理

「どういったウェブサイトに広告が表示されるのか」は広告主のブランドイメージに直結するため、広告が表示されるウェブサイトの質を厳しく管理することが重要です。広告を出稿する際には、ブランドに悪影響を及ぼす可能性のあるコンテンツを避け、第三者のブランドセーフティツールを使用してリスクを管理しましょう。

定期的なモニタリングとレビュー

広告のパフォーマンスデータを定期的にチェックし、広告がどのサイトに表示されているかを確認します。低品質なサイトが含まれている場合は、速やかに広告配信を停止するのがおすすめです。第三者のブランドセーフティツールから提供されるレポートも活用し、広告が表示されるサイトの品質を継続的に監視しましょう。

MFA問題のまとめと未来展望

MFAサイトの将来は、広告プラットフォームの規制強化、技術の進化、ユーザーの意識向上、広告主の対応など、さまざまな要因に左右されます。これらの要因が合わさることで、MFAサイトは徐々に淘汰される可能性もあれば勢力を増していく可能性もあります。

その中でも重要なのは広告を出稿する広告主のMFAサイトに対する意識です。マーケターは、目先の数字に騙されず、正しいKPI設計をし、広告パフォーマンスを確認し対策に努めましょう。

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